民泊仲介サイトの大手であるAirbnbが、2019年1月25日にデンマークのスペース予約サイト『Gaest.com』を買収したと発表した。

Airbnbによる買収は、2008年の創業から11年で19社目だ。買収額は非公開。2019年以降に行われると言われる新規上場（IPO）を前に、さらなる成長に向けた投資を行うとみられる。

2015年10月に設立した『Gaest.com』は、会議・ワークショップ・写真撮影など、ユニークなスペースを予約できるサービスだ。ロンドン・ブラジル・メキシコ・タイなど世界17ヵ国でサービスを展開している。Airbnbによると、同サイトは当面の間独自のプラットフォームでサービス提供を行なっていくが、『Gaest.com』の事業メンバーはAirbnbに加入する形となる。同サービスの創業者・最高経営責任者であるAnders Mogensen氏は、「世界で最もイノベーティブな企業の一員になれて、わくわくしている」という。

Airbnbはもともと、“部屋を貸し出す個人”と“部屋を借りたい個人”をマッチングするサービスとしてスタートした。最近は「民泊」の枠を超え「宿泊」周辺のビジネス強化に取り組んでいる。2015年には「宿泊」に加え、ローカルな体験を楽しめるアクティビティサービスを強化する方針を打ち出した。2016年には東京、2017年には大阪でも「体験」サービスを拡大し、Airbnbのゲストは宿泊に加え旅先でのローカル体験も楽しめるようになった。

2017年初め、同社はレストラン予約サービス『Resy』に1,300万ドルの出資を行い、パートナーシップを締結した。これにより、2018年後半に『Airbnb』のトップページをリニューアルし、「宿泊」「体験」に加え「レストラン」予約も可能となった。探したいエリアや滞在先のホテル周辺でのレストラン検索・予約が可能で、レストランの写真と詳細が一覧で表示されることに加え、Airbnbユーザーによる“実名のクチコミ”を見ることができる。すでに『Airbnb』での滞在先が決まっている場合には、『Airbnb』の画面からシームレスにレストランを予約でき、旅程表にレストラン情報を追加することも可能だという。

このほか、2018年12月には、フランスに拠点を置く民泊運営代行サービスの『Lucky Homes』を買収している。『Lucky Homes』は、清掃などの物件管理からゲスト向けサポートを提供するサービスだ。Airbnbが民泊運営代行サービスを買収したのはこれが初めてである。

また「ビジネス」という領域においては、2014年より同社のプラットフォーム上で、出張者向けの宿泊予約サービス『Airbnb for Work』を提供している。同サービスの予約件数は2015年から2016年の間に3倍に増加し、さらに2016年から2017年の間に再び3倍増加したという。2018年8月時点で、70万社弱の企業の従業員が同サービスに登録し宿泊を予約しているといい、このうち27万5,000社を超える企業が『Airbnb』を直接利用して出張を管理しているという。

Airbnbはこのたびの『Gaest.com』買収について、「チームは今後、出張だけでなく、オフサイトおよびミーティングでのチーム育成や顧客の移転にサービスを拡大することで、Airbnbの最高のサービスをプロフェッショナルの世界にもたらすことに力を入れていく」「われわれが思い描く世界は、誰もがプロフェッショナルなイベントのスペース、さらに長期的には祝賀行事のスペースを共有できる世界だ」と述べている。

多くの企業を買収し事業を拡大してきたAirbnb。これまで「宿泊」を核に「体験」「レストラン」など周辺サービスを強化していたが、出張でAirbnbを利用する企業・従業員が増えていることを受け、今後は「ビジネス」領域のサービスも強化していくようだ。「宿泊」の枠を超え成長を続けるAirbnbの、今後の動向に注目したい。

■「Gaest.com」公式サイトはこちら。

【参照記事】
Airbnb、スペース予約サイトの「Gaest.com」を買収　ビジネス客の「宿泊」周辺領域を強化
【参照サイト】
・Airbnb、デンマーク発祥のスペース予約サイト「Gaest.com」を買収
・Airbnb、会議スペース予約サイトのGaest.comを買収
・Airbnb、「レストラン予約」へ本格参入か　宿泊を起点に「食」の予約までをカバー
・【速報】Airbnb、民泊運営代行サービスの「Lucky Homes」を買収　創業10年で18社目の買収に
・Airbnb｜Gaest.com Joins the Airbnb Family
・ビジネス向け民泊「Airbnb for Work」、予約件数が1年で3倍に

（HOTELIER 編集部）