「特定技能」の活用で宿泊業は2019年度から5年間で2.2万人の外国人雇用が可能に、4月に試験を実施

改正出入国管理法の成立に伴い、政府が2018年12月25日に閣議決定した「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針」において、外国人材の就労拡大に向けて創設された新たな在留資格『特定技能』の活用で、宿泊業は2019年度からの5年間で最大2万2,000人の外国人の雇用が可能になることが盛り込まれた。2019年4月に「宿泊業技能測定試験(仮称)」の初回の実施が予定され、これを経て受け入れが始まる。

『特定技能』は、深刻化する産業界の人手不足に対応するために創設された。このうち「特定技能1号」は配偶者および子の在留資格は基本的に付与せず、在留期間は最長5年となる。“相当程度の知識または経験を要する技能”と、一定の日本語能力を持つ外国人が対象だ。

これまで、宿泊業への外国人就労は留学生のアルバイトなどを除き、在留資格『技術・人文知識・国際業務』などの活用による高度な専門人材として、原則的に通訳などの専門的・技術的分野の業務に限られてきた。これに対し『特定技能』は、指定の試験に合格した外国人であれば従事できる業務の幅が広くなる。現場の即戦力として、雇用環境が厳しい地方などの旅館・ホテルの人手不足対策になると期待される。

宿泊業の「特定技能1号」の受け入れは、旅館業法の旅館・ホテル営業の許可を受けた施設が対象となる。フルタイムの直接雇用や、日本人と同等以上の報酬などが要件だ。対象業務はフロント、企画・広報、接客、レストランサービスなど。これら業務に従事する日本人が通常行う、館内販売や館内備品の点検・交換などの関連業務に付随的に従事することは問題ない。また、同じ業種の同様の業務であれば転職も認められるという。

宿泊業団体の試算によると、現在の旅館・ホテルの就業者数は日本人・外国人を合わせて約57万人だという。政府の分野別運用方針では現時点ですでに約3万人の人手不足が生じ、さらに訪日外国人旅行者の増加などに伴い、5年後までに10万人程度の人手が不足すると推計している。これらを踏まえ、生産性向上と国内人材の確保による解消分などを差し引き、今後5年間の受け入れ人数の上限に2万2,000人が設定された。

また、経済・雇用情勢の変化に伴う受け入れの停止措置なども定められた。宿泊業を所管する国土交通相は、有効求人倍率などの指標を踏まえ、人手不足の状況に変化が起きた場合には受け入れ停止を法務相に求める。加えて、大都市など特定地域へ過度に集中して就労することのないよう、関係各庁や宿泊業界が連携し必要な措置を講じるよう定めた。

宿泊業で「特定技能1号」の在留資格を取得するために必要な「宿泊業技能測定試験(仮称)」は、日本旅館協会・全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会・日本ホテル協会・全日本シティホテル連盟の4団体が共同で設立した『一般社団法人宿泊業技能試験センター』が実施する。今後、筆記試験と実技試験が策定され、日本語能力は「日本語能力判定テスト(仮称)」または「日本語能力試験(N4以上)」で判定するという。

「宿泊業技能測定試験(仮称)」は、国外・国内でそれぞれ年2回程度実施され、初回の試験は2019年4月に実施予定だ。留学生などを対象に国内で実施されるとみられる。今後、宿泊業団体では制度の趣旨や外国人材の受け入れ手順などを、会員施設に周知していくという。

さらに政府は在留外国人の増加を踏まえ、2018年12月25日に「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を閣僚会議で決定した。各種相談窓口の設置などを通じて在留外国人の生活や就労を支援することに加え、自治体の態勢整備などを含めて必要な経費を当初予算案に計上した。

宿泊業界ではこれらの制度とは別に、最長5年の在留が可能な、技能実習法に基づく技能実習制度の活用も準備している。「技能実習2号」移行対象職種に宿泊業を追加する手続きを、国に対し宿泊業団体が連携して進め、2019年度には認定される見通しだという。

本来、技能実習制度の目的は人手不足対策ではなく、発展途上国などの外国人が日本で働いて技能を習得する国際協力である。安価な労働力として利用されてきた側面が問題視されているという認識が必要だ。また、受け入れ事業者は許可を受けた監理団体の実習監理を受ける必要があるなど、制度の仕組みも異なる。その一方で、「技能実習2号(技能実習1号を含め通算3年の実習)」の修了者は、新たな在留資格「特定技能1号」を試験無しで取得できる。受け入れ事業者は各制度の趣旨を理解した上で、外国人材の活用を検討しなくてはならない。

みずほ総合研究所が2018年8月に発表したリポート「ホテル市場の変調の兆しをどうみるか」によると、宿泊・飲食サービス業は他産業よりも人手不足が深刻で、宿泊業の就業者数は2030年にかけて減少し50万人を割ると予想している。加えて、従業員の高齢化も進むため、ホテルの客室数が十分でも従業員が足りず、訪日需要を取り込めなくなるリスクもあるとしている。新たに創設された『特定技能』が正しく周知・活用され、宿泊業の人手不足が解消することを期待したい。

【参照記事】
外国人就労、宿泊業に5年で2.2万人 新在留資格「特定技能」、4月に試験開始
【参照サイト】
・新たな外国人材受入れ(在留資格「特定技能」の創設等)
・外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議
・みずほリポート|ホテル市場の変調の兆しをどうみるか

(HOTELIER 編集部)


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