伊豆半島で展開した観光型MaaS「Izuko」実証実験、周遊促進や地域課題解決に一定の効果

東急株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、株式会社ジェイアール東日本企画の3社は、2次交通統合型サービス『観光型MaaS“Izuko”』の実証実験を、2019年4月1日~6月30日の「Phase1」と2019年12月1日~2020年3月10日の「Phase2」の約190日間実施した。この度「Phase2」が終了し、その結果と今後の課題を発表した。

『観光型MaaS“Izuko”』は、国内外観光客が鉄道、バス、AIオンデマンド乗合交通、レンタサイクル、観光施設などをスマートフォンで検索・予約・決済し、目的地までシームレスに移動できる2次交通統合型サービスである。実証実験は東伊豆および中伊豆エリアで展開した。

伊豆は多くの観光資源が集まる魅力的な地区であり、観光客数も微増傾向で2017年は4,736.6万人だった。しかし、高齢化や人口減少が進んでおり、観光客・住民の2次交通維持を課題として挙げている。加えて、鉄道5路線・バス390系統・タクシー数社がありながら、伊豆半島来訪時の利用交通手段は8割(2013年調査)が車で、2018年度の調査でも77.4%が車を利用している。2次交通を利用した周遊の促進が、交通事業者を含め地元経済にとっての課題としている。

2019年1月の実証実験発表時、期待される効果として「点在する伊豆エリアの観光拠点間のシームレスな移動実現による周遊促進と地域活性化」「IoT活用による交通・観光事業などの最適化、キャッシュレスや多言語対応といった観光拠点の抱える課題解決など」を挙げており、これらを通じ「Phase1」と「Phase2」での新たな顧客価値の提供をするとしていた。

なお、「Phase1」は『静岡デスティネーションキャンペーン』と同時期に行われた。同キャンペーンは、地方自治体・地元関係者等・JRグループ6社・旅行会社が協力し、開催期間の3カ月間に重点的かつ集中的な広告宣伝やプロモーション活動などを実施することで、全国から観光誘客を図り、地域を活性化させることを目的として実施する国内最大級の観光キャンペーンである。静岡県では19年ぶり3回目の開催だった。キャンペーン詳細はこちら

Phase1

「Phase1」では「静岡デスティネーションキャンペーン」の好影響もあり、専用アプリ『Izuko』の認知が拡大し、ダウンロード数が当初6カ月間の目標値であった2万ダウンロードを、実証実験開始後57日目である5月27日に達成するなど好調に推移した。また6カ月間で計1万枚の販売を目指す、鉄道とバスが一定エリアで乗り放題となるデジタルフリーパスと、観光施設の割引入場券の機能を持つデジタルパスについては、計1,045枚という結果だった。下田地区で新たに運行した「AIオンデマンド乗合交通」の利用者は、延べ1,051人(運行日数81日、1日平均13人)という状況だった。一方で、ダウンロードの手間を含めた操作性、サービスエリアの限定性、商品の幅、運用面など、多くの課題が浮き彫りになった。

実証実験が休止する7月~8月においても、経路検索機能など『Izuko』の一部機能を利用できるほか、『Izuko』を伊豆急行線沿線で提示すると、土産物屋の割引優待など様々な特典が受けられた。

Phase2

「Phase1」の課題を踏まえ、「Phase2」ではアプリケーションからWebブラウザに切り替え柔軟な商品設計を実現したほか、画面デザインや操作性の改善による操作性の向上、サービスエリア拡大やメニュー拡充、キャッシュレスの推進などの地域課題の解決に注力して取り組んだ。

「Phase2」では、「Phase1」の約5倍にあたる5,121枚のデジタルチケットを販売した。今回からサービスエリアに加わった、JR伊東線(熱海駅~伊東駅)を含むデジタルフリーパス各種が特に人気を集め、利用できる観光施設数の増加により複数枚購入するユーザーも増えた。その結果、デジタルパスの販売数が「Phase1」と比較して約1,000枚増加するなど、サービスエリア拡大・メニュー拡充がより多くのユーザーのニーズに合致したものと考えられる。

また、下田市内のAIオンデマンド乗合交通は「Phase2」から有料化(1日乗り放題400円)したが、利用客数や1人あたりの乗車回数が1.3倍前後に増えたほか、エリア内の観光施設のデジタルパスの販売数も倍増した。運行エリアの拡大や乗降場所に観光施設や宿泊施設などを加えたことで、下田地区の観光客の周遊促進に大きく寄与した。このほか、画面デザインや操作性の改善により、操作方法に関するコールセンターへの入電数は「Phase1」と比較して7分の1以下と大幅に減少した。

一方で、商品の事前購入対応、決済方法の多様化、ログイン画面などの操作性向上、観光客ニーズを踏まえた商品設計の必要性や、周遊範囲の東伊豆への偏りなど、解決すべき課題も多く残るとしている。

実証実験では2019年度の「Phase1」と「Phase2」を通じて、定量目標「ダウンロード2万件、デジタルパス類販売1万枚」、定性目標「シームレスな移動実現による周遊効果/交通・観光事業のスマート化/地域課題解決」を掲げた。定量目標については、ダウンロード2万件は「Phase1」で達成した。デジタルパス販売枚数は合計6,166枚と目標には届かなかったものの、国内の観光型MaaSの事例の中では圧倒的な利用規模となった。定性目標については、下田市内のAIオンデマンド交通の事例に見られる通り、交通機関や観光施設のデジタルチケットが一定数利用され、新たな周遊の動きも出ていることから、一定程度は実現が図れたと認識しているという。

今後は、2回の実証実験を通じて明らかになった諸課題に向き合い、社会実装に向けたあるべきサービスを目指して、最終的な実証実験を2020年秋以降で展開する予定だ。

当初『Izuko』はアプリだったが、Webブラウザに切り替えたことで機能にすぐにアクセスできるようになり操作性が向上した。また、サービス拡充により交通利便性の向上や旅のバリエーションが増え、周遊促進に効果的だった。AIオンデマンド乗合交通においては、「Phase2」から運行エリアに行政機関や病院なども含まれ、地元住民向けにテレビを使った配車システムの試験導入を行っている。下田など地方部ではスマートフォン保有者が低く、地元の利用者は全体の1割だといい、テレビで配車予約ができるようになったことで外出機会の増加が期待できる。実証実験で見えてきた課題を踏まえ、観光客・地元住民双方にとって便利なサービスとなっていくことを期待したい。

【参照記事】
・日本初、伊豆半島で展開した「観光型MaaS“Izuko”」実証実験の結果報告
・2019年4月から伊豆エリアにて実施する日本初の観光型MaaS実証実験の詳細が決定
・4月から伊豆で実施 日本初「観光型MaaS」実証実験のPhase1結果報告
・日本初の「観光型MaaS」・伊豆半島での実証実験Phase2 実装に向け、多客期の2019年12月1日~2020年3月10日(101日間)に実施
【参照サイト】
・東急株式会社|2019年4月から伊豆エリアにて実施する日本初の観光型 MaaS 実証実験の詳細が決定
・東急株式会社|日本初、伊豆半島で展開した「観光型MaaS“Izuko”」実証実験の結果報告
・東急株式会社|日本初の「観光型MaaS」・伊豆半島での実証実験 Phase2の詳細について
・静岡県|H29年度 静岡県観光交流の動向
・静岡県|平成30年度 静岡県における観光の流動実態と満足度調査

(HOTELIER 編集部)


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