2020年のホテル客室数不足は大幅緩和。民泊やクルーズ利用増も影響。みずほ総研が試算




2020年のホテル客室数不足は大幅緩和。民泊やクルーズ利用増も影響。みずほ総研が試算

みずほ総合研究所(以下、みずほ総研)は9月22日、2020年に向けたホテル客室数の需給予測についてまとめた「2020年のホテル客室不足の試算」と題するレポートを公表した。同レポートによると、現在政府が掲げている2020年に訪日外国人旅行者数4,000万人という目標は実現可能である一方で、新規ホテル開業計画数の増加や民泊・クルーズ船を利用する外国人旅行者の急増により、2020年のホテル宿泊需給は従来予想ほど逼迫しない可能性が高く、標準的なシナリオでは最大でもホテル不足客室数は3,800室程度にとどまるという。

同レポートは、ホテルにおける外国人の平均宿泊日数の低下などの最新トレンドを踏まえて昨年8月に同社が公表したレポート「訪日外国人4,000万人時代の宿泊施設不足」の試算を全面的にアップデートしたものだ。みずほ総研は同レポートの中で、2020年に訪日外国人4,000万人という政府目標は為替レートやGDPなどを含めたパネルデータによる推計からは射程圏内であることが改めて確認されたとしている。

一方で、政府目標の達成を前提に試算した場合、宿泊需要は2016年と比較して3~17%程度増加する計算となるものの、日本人の需要が下振れした場合は2016年対比で減少する結果となると見込まれており、訪日外国人だけではなく日本人の宿泊需要の掘り起こしも課題だとしている。

また、同社はいずれのシナリオにおいても地方圏の宿泊シェアは2016年から低下するとしており、地方圏への集客を一段と加速させるためには自治体や民間業者による観光プロモーションだけではなく、地方空港の国際便増加に向けた取り組みや地方への交通インフラ整備などが欠かせないと指摘している。

そして、宿泊需要に対するホテル客室の供給状況を明らかにする不足客室数の試算については、年初時点での試算(最大3.3万室)から数値を大幅に縮小しており、供給側のシナリオが標準の場合、日本人・外国人の宿泊需要が共に上振れするシナリオであっても2020年の不足客室数は最大3,800室程度で、仮にホテルの客室数が計画を下回った場合でも23,000室の不足にとどまるとしている。特に東京都については最大でも3,000室しか不足しない試算となっており、みずほ総研はその理由として宿泊者が東京以外の地域に分散している点、民泊需要へのシフトを挙げている。

なお、今回の試算結果はあくまでホテルの宿泊需給を対象としたもので、ホテルだけではなく民泊やクルーズ船の利用者を含めた宿泊需給バランスの変化を示しているわけではない。一方で、ホテル業界にとっては民泊やクルーズ船に訪日外国人が流れることで訪日外国人数の増加とは裏腹にホテルへの宿泊日数は鈍化しているという事実を受け止める必要がありそうだ。

上記の状況をふまえ、みずほ総研は現在のペースでホテルの新規オープン計画が今後さらに積み上がった場合、2020年の東京五輪後にホテルの過剰問題が顕在化するリスクは否定できないと警鐘を鳴らしている。

新規ホテルの開業ラッシュに加えて、来年6月には住宅宿泊事業法が施行され、一般住宅の貸し出しも全国的に解禁される。現状では新法施行後に民泊物件の供給数がどのように変化するかは不透明だ。新法施行後のマンション管理規約変更や改正旅館業法による罰則強化などにより現状の民泊市場の大半を占めている違法な民泊物件数が減少に転じれば、短期的には民泊の客室供給数は減る可能性もある。一方で、長期的に見れば民泊合法化により市場の裾野は広がっていくとの見方も強い。

また、本格的な事業としてではなく副収入ややりがいを求めて民泊を運用するホストが増えた場合、採算性を重視しない価格設定が進むことでホテルも含む宿泊市場全体の価格に値下げ圧力がかかる可能性もある。

今回のみずほ総研のレポート内容も踏まえ、民泊・ホテル事業者は今後の需給見通しを十分に考慮した事業戦略を練る必要があることは間違いない。

【引用サイト】
MINPAKU.Biz ニュース記事「2020年のホテル客室数不足は大幅緩和。民泊やクルーズ利用増も影響。みずほ総研が試算」

【参照記事】
みずほリポート「2020年のホテル客室不足の試算」
みずほリポート「訪日外国人4,000万人時代の宿泊施設不足」

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