訪日外国人が増加の中、次のキーワードとなる「ムスリム」について知る -第1部-

日本政府観光局(JNTO)は、2016年通年の東南アジア諸国連合(ASEAN)主要6ヶ国からの訪日者数(推計値)を、前年比21.3%増の251万人と発表した。ASEANからの旅行者数は世界全体の1割強にすぎないが、現在、ハラル(イスラム教の戒律で許されたもの)対応を含めたASEANからの誘致を強化することが、観光業を含む日本経済の活性化に貢献すると言われている。査証(ビザ)の緩和もあり、日本への関心も高まっている。

そんな期待のできるマーケット市場をふまえ、ハラル環境の開拓や整備の他、ツアー客のアテンダント業務、広域連携によるムスリムの訪日観光客の誘致を積極的に行なっている、JHTC株式会社にお話をうかがった。

現在、アジアムスリムには6億人以上のマーケットがある。その中でも、JHTCは、インドネシア側でのプロモーションや集客に強みを持っている。「これまでインドネシアやマレーシアからの訪問者は比較的裕福な華人が多かったが、ボリュームゾーンを狙うには、イスラム教徒(ムスリム)の誘客が鍵だ」とJHTC株式会社の亀井社長は話す。また「色んな慣習があるが、イスラム教が対象だからその配慮を完璧にしないといけないということでなく、そのお客様の特性を知っておき、それに対しておもてなし(気を遣う)をすることが大事だ」と語ってくれた。

今回は、第1部作、ムスリムの基本的な情報についてお届け。「そもそもムスリムって何?」「食事やお祈りの慣習は?」など様々な疑問を解決するべく、ムスリムについて全3部構成であらゆる視点から紹介していく。訪日での需要についてやムスリム対応ホテル、今後のムスリムマーケットなど……。実際に日本でムスリム旅行者の受入時に際した対応についてお困りの方や、今後そういった場面がある事業者さんは必見だ。

ムスリムとは?

イスラム教(イスラーム)は、現在のサウジアラビアを発祥地とし、唯一神アッラーへの絶対的な服従を説く一神教の宗教、イスラム教。その宗教を信仰しているイスラム教徒をムスリムと言う。世界で約20億人もの人が信仰しており、西アジア、北アフリカ、中央アジア、南アジア、東南アジアなどに多くのムスリムが住んでいる。ムスリムの生活は、豚肉やアルコールを禁忌とすることを代表として、戒律で細かく定められており、年齢、性別、生活する国や地域などによって習慣は大きく異なり、個人差がある。日本へもムスリムの観光客は増える昨今、ホテルや観光地などで迎え入れるときは、丁寧なコミュニケーションを心がけよう。

ムスリムの食事は?

ムスリムは食べ物に関して細かいルールがある。日本へムスリムの観光客を呼び込む際には注意が必要だ。実際、多くのムスリムが日本での観光の際、禁忌に触れない食事を摂れるか不安な人が多い。このような不安を払拭することが、さらに多くのムスリム観光客を迎え入れるには重要な課題となってくる。

ムスリムフードが許可されたという意味で、「ハラルフード」と言った言葉がある。これは、“イスラム教の教義に法って食べることが許可された食事”という意味になる。一方、「ハラムフード」とはその逆。豚肉を使った料理となる。しかし、前述にもあったように、ハラルやハラムについては地域や宗派により解釈が異なるため、迎え入れるときは、事前のコミュニケーションや確認が大変重要だ。

ムスリムのお祈りについて

ムスリムにとってお祈りは欠かせない習慣だ。より良いおもてなしで日本に迎え入れるために、彼らの習慣を尊重してサポートしよう。

最寄りのモスクを把握しておこう

ムスリム観光客からの質問に、「近隣にあるモスクは?」と聞かれることがある。最寄りのモスクの詳細およびアクセスなどは事前に把握し、いつでも紹介できるように心掛けると良い。近隣にモスクがない場合は、お祈りのできる清潔な部屋を用意しておくと喜ばれるかもしれない。しかし、あくまでも情報開示と個人の判断を尊重することが大切なので、ない場合は「ない」という心が大事だという。

お祈り時間を知っておこう

ムスリムは毎日5回の礼拝を行う。

ファジュル・・・夜明け前
ズフル・・・日の出からアスルまでの間
アスル・・・影が自分の身長と同じ(2倍)になってから日没まで
マグリブ・・・日没から日がなくなるまで
イシャー・・・夜

礼拝の時間はその場所の日の出と日の入りの時間によって異なる。滞在都市の礼拝時間はインターネットなどで調べることができるので、検索先を把握しておくと良い。例えば、ツアー中に礼拝のための休憩時間を取ってほしいと希望する人もいるので配慮が大切だ。

メッカの方角を明示しておこう

礼拝は正しくキブラに向けて行われなければならない。旅行先だと正確な方角を知るのは困難なため、宿泊や商業施設にキブラを示す標識があると大変喜ばれる。ちなみに、キブラとは、メッカのカーバ神殿の方角を矢印などで示す備品のこと。天井の隅に貼ってあったり、デスクの引き出しに貼ってあったり、宿泊施設でも対応しているところがある。方角を調べるためには、今ではインターネットで調べたり、スマホのアプリを利用したり簡単に知ることができる。キブラコンパスを貸し出す施設もある。

お祈りの際にはマットを使用する

お祈りはマット(絨毯)を敷き、その上で行われる。マットを旅行先まで持ち歩くムスリムの人もいるが、貸し出しを希望する場合もある。大きさは、大人が立ったり、うつ伏せたりすることができるサイズでOK。お祈りスペースと共に、貸し出しマットがあることも案内できると、日本人の心遣いを感じムスリムの人へ好印象を与えられる。

お祈りの前には体を清める

ムスリムは、礼拝の前に“手・口・鼻・顔・腕・髪・足”を水で清める。しかし多くの宿泊施設や観光地ではそのための設備やスペースが用意されていない。そのため、やむを得ず洗面台を代用した結果、床を濡らしてしまう場合がある。できる限り彼らの習慣を尊重し、十分な対話をもってきめ細かなサポートをすると良い。

ムスリムの人への接客について

イスラムの戒律は、日本人では考えられないほど、生活の隅々にまで及んでいる。しかし、大切にしている信仰や生活習慣が旅先で尊重されることこそが、心に残るおもてなしとして喜んでもらえるので、心遣いが大切だ。

アルコールは分かりやすく明示しよう

日本語が分らないムスリムにとっては、アルコールかどうかの判断が難しい場合がある。例えば、カクテルなどは見た目ではジュースと区別がつかないものも店には販売しているケースがあるので、分かりやすくアルコールであること明示すると喜ばれる。

同性の接客を望む人もいる

ムスリム女性は、接客の際、女性が担当して欲しいという要望がある。男性がムスリム女性への接客を行わざるを得ない場合は、部屋で二人きりにならない、あるいはドアを開けておくなど配慮をする必要がある。

聖書と仏典は事前に取り除く

ホテルの客室には大抵、聖書や仏典が置いてある場合があるが、ムスリムの人が滞在する場合は、事前に取り除いておいた方が望ましい。非ムスリムがイスラム教の聖典コーランを手にすることを嫌うムスリムもいるので、コーランは置いておく必要はない。

まとめ

このようにムスリムの色々な慣習を紹介したが、あくまでも、ムスリムの人への情報開示と個人の判断を尊重することが大事だ。近隣にモスクがなくても、お祈り用のマットを用意していなくても、相手とのコミュニケーションでいくらでも変えられる文化である。日本人のおもてなしの心を込めた接客が重要になってくる。

亀井社長は最後に、「ムスリムの人へのちょっとした気遣いや配慮が大切で、そのおもてなしができてこそイスラム教徒が選択できる商品となり、将来的なリピーターとなってもらえると考える」と語ってくれた。

【JHTC JAPAN株式会社】
本社:東京都中央区
代表取締役:亀井 正史

左が亀井社長

(HOTELIER編集部)


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